<ガンスリンガーの投入、完了いたしました。>
ホログラムのシスターは、いつものように真剣な目つきでそう告げた。
「ご苦労様、ケイト。」
その報告に、書類の束から目を落としたままカテリーナは頷いた。今日も執務机の上は書類であふれかえっている。この分だと、今夜も徹夜になりそうだ。
そのせいもあったのだろう。カテリーナは、正面に姿を見せている女性が、どこか不安げに自分を見つめているのに、気づくことが出来なかった。
<あの・・・それで、少しお聞きしてもよろしいですか?>
少しばかりの間、言おうか言うまいかこのシスターは悩んでいたようだった。しかし、用もないのにいつまでもこの場に居座るのも、この上司の気に触るとでも考えたのか。とうとう控えめに問いかけを発したのだった。
「何か?」
相変わらず筆先を休めぬまま、カテリーナはかすかな意識を対面のシスターに向けた。それを確認すると、ケイトは少しだけ胸をなでおろして言った。
<本当に、これでよろしいのでしょうか?失礼ですけれど、あたくしにはもう、人員の無駄使いとしか・・・。>
「そんなことはありませんよ、ケイト。」
会話に対しては、さして意識は及んでいないはずだが、カテリ−ナはすっぱりと否定してみせた。その声にはいささかの淀みもない。
「やり過ぎなどではありません。彼には、むしろこれくらいがちょうどなのですよ。」
<はあ。>
断言してみせるカテリーナに、ケイトは曖昧な同意をこぼした。教授とは、自分も同じくらい付き合いが長いはずだが、どうやら上司の方が彼のことをよく分かっているらしい。
「どうせあの人のことです。堂々と潜り込むようなことなどせず、遠まわしに何か計画でも練っていることでしょう。そうですね、今ごろは、彼の賛同者でもけしかけて、作戦を実行に移させているところでしょうね。」
<遠まわしにって・・・そこまでする必要性があるんでしょうか?>
「さあ、それは本人でなければわからないことですが。」
仕事に一段落がついたのか、カテリーナは手にしていた万年筆を、コトリと執務机に落とした。軽く背伸びをすると、このときようやっとケイトの方を見る。もう何時間も書類と向き合ってきたというのに、ふと見上げた彼女の顔は、心なしか、面白いものでも見つけた子供のごとく、微笑んでいるように見えた。
「ですが、大体どういう手に出るか予想することは出来ます。そうね。もうそろそろ執務室付近の天井裏あたりが、騒がしくなっているんじゃないかしら。」



to be continued…



〜あとがき〜

「夢を見る夢」、なんてややこしいものを見てしまいました。そして、そのあと、さっきのは夢だったのか、現実だったのか、なんて夢の中で悩んでました。
イヤ、どっちでもいいじゃないですカ。両方、夢の中の出来事なんだから。
夢の夢は現実・・・なわけないし(お間違えのなきように←間違えないってばっ)
と、いうわけで、前置きが長くなってしまいましたが。
皆様、今回もここまでいらしてくださり、誠にありがとうございます!
慧仲茜です。
「灰色文献」第3話、ということで、今回は、ちょっとした前触れみたいな感じでお送りしました。
(みっ短いヨ・・・;)
ユーグの登場を期待してくださった方、ごめんなさい。もうしばしお待ちを。
一回の分量を考えた末に、分ける決断をいたしました。
ユーグの、そしてアベルやトレス君の登場は次回になります;
もっもうしばしお待ちを・・・

さて、もうかれこれ一ヶ月以上前になりますが、今現在(2006年8月)トリブラの作者でいらっしゃる吉田直先生の遺品などを展示した「スナオ展」が開催中だそうですね。(むちゃくちゃ今更〜)
残念ながら私は、遠方で赴くことができませんが・・・ううむ、一生の不覚;(←局長?)
トリブラの構想メモとかもあるらしくて、未発表のものとか、絶対ありますよね!(むちゃくちゃ期待)全部書き写して帰りたいくらいの気持ちですよ。
いらっしゃった方の中には、内容について、ちらりと触れてくださっている方もいらっしゃるようですが・・・
(それによると、トリブラのラストは、年老いたエステルがアベルことを子供たちに語って聞かせるとか。
そっかぁ・・・やっぱりそういう役目はエステルなんですね、というか、やっぱり生き残るんですね、彼女は。
カテリーナさんは・・・無理でしょうか?やっぱり無理!?ううむ・・・)
どなたか、懇切丁寧に内容全解説してくださってたりとか、しないですか、ね?
いや、それはやっぱりいろいろ問題アリですか、著作権とか、著作権とか、著作権とか・・・;

それにしても、亡くなったのが7月15日だなんて・・・フランス革命勃発の次の日ですよ、みなさん〜
ほんともう、最期までそういうものにとり憑かれていらっしゃったんでしょうか。皮肉なことです。

などと、盆も近付く今日この頃に、考えてしまった慧仲でございました。

それでは、よろしければ、次回もお付き合いくださいませ。
以上、もしかしたら本文よりも長かったかもしれない(!?)あとがきでございました。