○トロンプルイユ
強い日差しが照りつける中。
「毎日毎日、あんな退屈なだけの任務よくやるなぁ」
「言ってやるなよ。例えこれが3秒で終わるほど簡単で任務にもならねぇくだらなさでも、Dランク付きなんだからよ」
今日も今日とて、上忍のカカシの下、ナルト、サスケ、サクラの3人は森の中で探し物の任務に励んでいた。
「あっつ〜。オレ、夏ってダメなんだよなぁ」
「だからって、気を抜くなよ。あれが影分身だってバレるぞ」
「わかってるよ」
ナルトを巡ってサスケとカカシが言い合いをし、サクラが呆れてナルトを連れ任務に行く。
しばらくして気付いた2人が、彼女達の後を追って駆けて行く。
スリーマンセルを組んで慣れた頃から見られるようになった、毎日の光景。繰り返しの、日々。
「けど、アイツって、あれでも一応優秀な上忍なんだよな。何であれが分身だって気付かないもんだか」
「さぁてね。大方目が曇ってんじゃねぇのか。平和ボケと惚れた弱みと『ナルトは実力がない』って先入観で」
忍失格じゃん、とナルトはくつりと笑いを零した。
同じ顔、同じ容姿、同じ声。
下で馬鹿騒ぎしながら3人と笑い合う『うずまきナルト』と、木上でシカマルと話をし笑う『うずまきナルト』。
なのに、笑顔も雰囲気も全く違う。動と静。全くの別人のように見えて、そうではない。
どちらが、本当なのか。時々わからなくなりそうで、少し怖い時があると、彼を知る者は時折思うらしい。
もっとも、シカマルはそうだと思ったことは一度とてないけれど。
つまらない、と纏わりつく風に髪を流し、ナルトは呟いた。
「あーあ。気付かないかなぁ。いい加減、さ」
「気付いちゃまずいだろうが。オレたちは暗部なんだぜ」
「そりゃあそうだけどさ」
一旦言葉を切って、ナルトの蒼穹の瞳がふっとシカマルを捉えた。
思わずその神秘的な蒼に、捕らわれる感覚を覚えた。
「時々、本当に思うよ。気付けばいいのにな、って」
そうすれば、きっとこんな幼稚な芝居もお終いにできるのに、と。
残酷なほど綺麗な笑顔に、シカマルは惹かれる衝動のまま口付けた。
拍手再録。ナルトでシカナルでした。ナルさんのこんな心情もちょっぴり気に入ってます。
しっかし、私の中じゃ見事に『夏=暑い』のイメージしかないもんなんだなぁ;
*トロンプルイユ
→〔目をあざむく意から〕だまし絵。精密な描写で、実物そっくりに見せかける。
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