思えば、一瞬ためらったのがいけなかったんだろう。
もう手遅れな傷を負いながら、同じくらいの年の子供がいるんだと泣いた男に、最期の止めを刺そうとしたオレは、うっかり手を止めてしまった。
だが、その瞬間をついて男は隠し持った小刀で、オレのわき腹をぐさりと刺した。
「ごめんな、坊や。仕事なんだ。おじさんと一緒に死んでくれ」
涙を流しながら、刃を持つ手を震わせながら、片方の手で優しくオレを抱きしめてくる。
少し、暖かいなと思った。そっと目を閉じる。
しかし、男の体は突然大きく痙攣した瞬間、そのまま崩れ落ちた。
目を開くと、赤い刀身を提げた、不機嫌な面持ちの黒髪の相棒がいた。
「ちっとは避けよう、なんて思わねぇのか」
「不可抗力だ」
顔をしかめて、腹に刺さったままの小刀を抜き捨てる。血が大量に流れ出るが、痛くはない。
その様子に増々不機嫌な顔をしながら刀を仕舞うと、印を組んでチャクラを練り、オレのわき腹に手を当てて治療をし始めた。
「5年ほど寿命が縮まったぞ。緋月」
「ごめん。黒焔」
「謝罪はいらねぇ。この代償は高いからな。覚悟しとけ」
返事と感謝の言葉の代わりに、相棒の額に唇を落とす。
離した途端、ぐいと引き寄せられ、相棒の唇がオレのに強く重なりあった。
涙は出ない代わりに静かに目を閉じてみる。
死んだ男には悪いが、今は道連れはごめんだと。そう思った。