「ねぇ、刹那。君ってホント美人だよネ」
「………カカシ、あんた変なものでも拾って食べた?」
緋月との任務も終わった帰り、偶々会った変態ストーカー(他称)カカシに、刹那はそう返した。
もちろん、その場には緋月もいる。今まで緋月を執拗に追いかけていた彼が、邪険にしているはずの刹那に先程の台詞を言うのは、明日は槍が降るのではというくらいありえないことであった。
「何言ってんだ?カカシ」
「邪魔しないでネ、緋月。俺今日から刹那を口説くことにしたんだ!」
堂々としたカカシに、緋月も刹那も目を瞠った。次いでやったことは、空から飴か槍が落ちないかの確認であった。
「ヒドイなぁ。そんなに俺って信用ないワケ?」
「「全くもって」」
「大体、いつも緋月に迫ってたのが、いきなりあたしに、って言われても信用できないわ」
「えェ〜っ。俺はこんなに真剣なのに」
馴れ馴れしく肩を抱いて、刹那にくっついてくる。だが真剣と言いながら、カカシの目は緋月をちらちらと見ていた。
(どうせ、押してダメなら引いてみろ、とかわけのわからないことをするつもりね。けど……)
「信じられないわ。あたしにとってあんたは邪魔者なの。いい加減その手をどけてくださらないかしら?」
「つれないなぁ。俺達の仲でショ」
「…っ、一回頭を…」
「カカシ、お願いがあるんだけど」
さりげなく刹那からカカシの手を外し、緋月はカカシに話しかけた。それにカカシは嬉々として応じる。どうやら刹那の考えていたことは大当たりだったらしい(当たっても嬉しくはない)。
「実験で面白い術が組みあがってさ。今ちょっと試してみてもいいかな?」
魅力的な笑顔をカカシに向ける。しかし、その瞳は少しも笑ってなどいない。
氷を背中に放り込まれたような恐怖を覚えたカカシは、冗談だ、と言おうとしたが、それより先に緋月が口を開いた。
「地獄への、ドライブだ。楽しんできてくれ♪」
印を組んで、術を発動させる。ブラックホールが空中に出現した。
泣きかけのカカシに、緋月は白いハンカチを振って、それはもう楽しそうに吸い込まれていくカカシを見送った。

後日―――
「ナルは、自分が言い寄られるより、俺とかイノがそうなる方が怒るんだよな」
この一件を聞いて、シカマルはイノにそう言って笑ったとか。



ドライブ



拍手用SS。カカシさんの妙な引き方と、ナルさんの怒らせ方。シカマルの発言は、一度自分にも同じようなことがあったからかと(笑)