ある日の午後。
ナルト邸に呼ばれたシカマルは、神妙な顔をする屋敷の主と向き合っていた。
「最近、体がおかしいとか、ないか?」
「は?」
「いや、胃に穴開きそうとか、熱っぽくて体がだるいとかっ」
「お前はぁっ。また俺を新薬の実験台にしたのかっ?!余程あれだけじゃ懲りなかったとみえるなぁ(邪笑)」
「え、違う違うっ!!前に言ってなかった?そんなこと」
「あれは…胃に穴が開きそうなのは、誰かさんが無茶してないか心配だからで、熱っぽかったのは、単にイノの風邪がうつっただけだ!」
「じゃあ、何とも、ない?」
多少潤んだ瞳で見上げられ、シカマルは顔を赤らめながらも、ない、と言う。
「お前に心配して貰えるのは、すごーく嬉しいことだが…何が言いたいんだ、ナル?」
「…驚かないで聞いてくれ。実はな、こんなものが見つかった」
差し出されたのは………わら人形。しかも多分シカマルの顔写真(盗撮バレバレ)付で、腹を太い五寸釘が貫通した代物である。
そう。誰かが明らかにシカマルを呪ってるとしか思えないっ!!
「………これ、どこから拾ってきたんだ?」
「ちっ、驚き少ないなぁ。…神社。言っとくが、拾ってきたんじゃないぜ。毎晩騒音が邪魔で眠れんから何とかしてくれ、って頼まれたんだよっ」
なぁ、とナルトは右隣に話を振るが、どう見てもそこには誰もいない。気配はあることから、『人』ではなく『妖』か、と思う。
こうやって、ナルトが妖たちの厄介ごとを引き受けるのは、よくある光景だ。なので、シカマルは今回も特に驚くことはなかった。
「しっかし、こいつバカじゃねーの?」
「本当だよなっ。作法完全間違ってるっての!」
「…おい」
「大体白い服じゃないし、ろうそく1本ってのはケチだよなぁ。しかも始めた日が悪いし、そもそも写真ピンボケ、相手の名前書いてないっ」
効果0のくせに騒音公害で安眠妨害とは、何て傍迷惑なやつなんだろうか、とナルトは憤る。
が、そこにシカマルの突っ込みが入った。
「って、ちょっと待てっ。今の口振りからしたら、呪ってる相手知ってるみてぇじゃないか!!」
「うん。その通り。呪詛してるやつのこと、全部聞いたし」
あれならやってもおかしくない、と一人で納得する。
「納得してないで、教えろっ。相手は誰だ?!」
「オレとお前が話してる時に限って、セクハラしてきたり会話の邪魔したりする、片目隠した銀髪マスクの怪しい某変態上忍」
「あいつ、かっ!!」
特徴を聞いて、一秒もかからず、シカマルの脳裏にある人物が思い浮かんだ。
いわずと知れず、ナルトの班の担当である、畑カカシ上忍のことである。
「いい加減やめてもらわないと、安眠妨害で妖連合組合から訴えるって言ってるからなぁ。今日にでも片付けようかと思ってるんだが、呪詛対象には言っておいた方がいいかと思って」
「………なぁ、ナル。その片付け、俺がやってもいいか?」
「そりゃあ構わないけど……ほどほどに、な」
「任せろ。………今日こそ思い知らせてやる、あの腐れ上忍めっ」
そう言って、周りに黒いオーラを発しながら、黒い笑いを響かせる。
それを横目で見たナルトは、本日の被害者になるだろう担当に、ご愁傷様、と呟いた。
真夜中。神社では変な悲鳴が何度もあがったらしい。
しかし、翌日から、神社での騒音被害は、ぱたりと消えたと報告がナルトの元に来た。
そして次の日予定されていた下忍任務は、急遽合同という形になった。
何があったのかは、当人たちと神…ならぬ、妖のみぞ知る、である。