任務のため、ようやく手に入れた赤い壷の中を見た途端、ナルトは大きく顔を歪めた。
中は、無数の蛇が共喰い争ったあと。血で染まる屍の山の頂点に立っているのは、一匹の蛇。
襲い掛かろうとするそれを、ナルトは避けて鷲掴みにした。
「殺らなきゃ、自分が殺られる……そんな世界で、お前は何を思う?」

他の誰かを殺さなければ、生きて壷の外に出られない、蛇。

襲い掛かる者全てを殺さなければ、里の中で生きてはいけない、自分。

「…外に出られたからといって、それが幸せだとは限らない」
静かに呟き、手の中でのたうち暴れる蛇にかける力を徐々に強くする。
次第に大人しくなるその様を見ても、蒼い瞳は何の色も映さない。
「だけど、中にいて幸せだと思っていた時も、もう戻らない…」
守りたいものがない、と悲しげな声が、ただその場に響く。
ぐしゃりと耳障りな音がして、手の中で赤い花が咲いた。

その世界の名は、………『蟲毒』という。



蟲毒



拍手用SS。ナルトの世界はこんな感じかも。