どんな学校にも一つはつきものである、七不思議。
当然、木の葉の里のアカデミーにもそれはあった。
「知ってる?この教室に出るんだってさ」
「夜中になると誰かが肩を叩いてくるってやつ?」
「そっ。聞いた話だと、学年主任のやつがやられたんだって」
「誰に?」
「そいつに決まってんだろ。宿直で見回りに来て、大慌てで逃げたって話だぜ。しかもその時にカツラとられたって」
「あぁ!そういや、朝来たらそんなの落ちてたなぁ。ってかあの頭がズラだったのに大笑いすんぜっ」
「どうやらこの間仕掛けて帰った罠がちゃんと作動したみてーだな」
夕暮れ時、その噂の教室で五人の少年達が向かい合っていた。
「あははっ!やっぱヅラだったのか、あの頭!!」
「朝それ拾ったイルカ先生のとこに取りに来た、学年主任の顔っ。面白かったってばよ!」
「まぁスカッとしたしな…実際の噂を利用しただけだけど」
「でも、あれが本当だったら怖いよね」
「そうだな。案外本当かもしれん」
「嫌なこと言うなよ、シノっ。早く帰ろうぜ」
「ワンっ」
「しゃーねーな。ナルト、帰るぞ」
「今行くってばよ!」
鞄を持って、金色の髪の少年は先に教室を出て行った友人達を追いかける。
が、ふと入り口で立ち止まって振り返った。
「また、明日な」
教室の中央に立つ黒い影に、いつもとは違う口調で小さく呟くと、担任の教師とすれ違いざまに挨拶をし、再び友人達を追って走り出した。
教師は先程の生徒に文句を言いながら、教室を見渡した。
「ったく、ナルトのやつ。走るなって言ってるのに…と、誰もいないな」
そして、扉に鍵をかけて廊下を歩いていった。
教室内に残されたのは、黒い影が一つ。
影はにぃっと笑うと、暗くなりつつある教室の影に、静かに溶けて消えた。