オレンジ色の空が、闇に侵食されていく。
夕刻のこの時間に、人気の全くない路地裏で。ナルトはわけもなく空を見ていた。
「何やってんだ、ナル?」
のぞきこんだのは、シカマル。現在の最愛(の内の1人)にして、最高の相棒。
いつもより眉間に皺を寄せた顔が、彼の父親によく似ていてきたな、とどうでもいいことを思った。
「空、見てた」
「空?いつも見てるだろ」
「そーだけど。でも、今の時間の空って、不思議じゃない?」
その言葉に、シカマルも同じく空を見る。交じり合った色合いが、とても不気味だが、綺麗に見えるのが不思議といえば、不思議である。
そうだな、と肯定すると、ナルトはそうだろ、と返した。
「何かオレがシカに喰われてるみてー」
「はっ?!い、いきなり何言い出すんだよっ」
「いや、何となく。だって、オレの服オレンジだし。お前の髪、黒いし」
さらっと言うナルトは、どこかぼーっとしていた。対してシカマルは、夕日のように真っ赤な顔。
「…頭からバリバリ食ってくれな」
「……頼むから、そういう台詞は一回でも食わせてもらってから、言ってほしいよなぁ」
「ばーか。そういう台詞はイノのいる前で言って、許可貰ってから、言い直せ」
「………それって、一生無理じゃねえ?」
「可能性は、0コンマ1以下」
「…今すぐ起きて俺の顔見てみやがれ」
くすりと笑うと、ナルトはようやく半身を起こして、要求に従った。
目に映るのは、相棒の不機嫌顔。闇色の瞳が綺麗だな、と、無関係なことを考える。
「シカクのおっさんに似てきたなぁ」
「嫌なこと言うなっ。ほれ、帰るぞ」
差し伸ばされた、手。恐る恐る伸ばすと、ぐいっと掴まれ、引き起こされた。
呆れたような声音だが、表情は嫌だと語っていない。指先にこびりついた血を拭う。
「げ、口の端も切れてるぞ」
「あれ。どうりで痛いはずだ」
「いい加減、『抵抗』って言葉、覚えよーぜ」
そう言ったシカマルは、本人の了承も得ず、口元の血を自らの唇で丹念に拭い取る。そっと、優しく。
口を開くに開けず、ナルトは顔を赤らめるだけだった。
交わるオレンジと黒。喰われずとも、側にいるだけで、染められていく。
夕闇は、今の自分たちに似てるかもしれない、と少しだけ思った。
夕闇
拍手用SS。加筆修正済み。シカナルでした。空境の色がそんな感じに見えるんで。私は夕闇結構好きです。
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