それは、遠き昔の、あるべき国の物語。


「愛してほしい…ただ、側にいてほしい…」
それだけなのに……と、小さな呟きが零れ、涙が一筋、頬を零れ落ちた。
手足には、冷たく重い、枷。幾度となく叫び続けた声は、以前のような精彩を欠いている。
じわりと動かなくなる体に、何度悲鳴をあげそうになったか。

会いたい。声を聞きたい。触りたい。

耳障りな音を立てて、腕を持ち上げる。
格子から見える月は、彼の瞳のように、優しい光をたたえている。
けれど、伸ばしてもそれが届くことはなく…。
代わりに、届けばいいと、小さく唄を歌う。
あの時のように、華やかな舞台も、軽やかな舞も、何重にも重なる素敵な音楽も、決してないけれど。
募る思いは、変わることのない、永遠のものだから。

覚えているのは、悠久の星がきらめく、紺色の空。
そして、貴方との、たった一つの約束………。



 古 の 恋 々 唄 (アンティーク・レクイエム)