むせ返るような薔薇の香りが、当たり一面を包み込む。
棺に横たわる花嫁姿の少女は、ドレスの純白と花の真紅で美しく飾られていて、まるで人形のようだ。

「お返しいただけませんか。彼女は貴方のおもちゃではありません」

「何を言う。私は彼女をそんな風に扱ったことなど一度もない」

怒りを押し殺した言葉も、目の前の男には通じない。
 棺に近づき、少女の髪を手にとって、そっと唇を押し当てる。まるで愛しい恋人へ接するように。
そして髪に歯を立てた。男は甘いものを食べたように、うっとりと目を細める。

「うぇ。悪趣味」
「狂った耳には、それさえも甘美の言葉に聞こえるだろうな」

青年の1人が痛烈に皮肉な言葉を吐いたが、彼の言葉どおり、男の耳にはそよ風のささやきにしか聞こえなかったらしい。

「さぁ、親方様。始めましょうか」
「うむ」

頷いた男に、隣に控えていた魔導師はにやりと笑い、左に構えた杖を空へと掲げた。



序章



〜あとがき〜
とりあえず初のデルフィニア戦記小説です;
でもいきなり長編なんていいのかな、とも思います…。
どんな話になるのかはわかりません(ェ
予定ではオールスターにご登場願うかと。
こんなのでよろしければ、どうぞお付き合いください。